園長日記
先月、園長日記No.28(2014年3月20日)で、「韓国へ行ったこの雌がハチゴロウと同じ役割を果たしてくれるものと期待される」と、私は書いた。そこで、ハチゴロウの役割とは何だったのか、改めて考えてみたい。そもそも「ハチゴロウ」という雄は、試験放鳥が始まる3年前の2002年8月5日に、大陸から飛来した個体である。だから「ハチゴロウ(八五郎)」という愛称がついた。放鳥を前に、どのような生息地を創出したら良いのか悩んでいた私たちに彼は様々な事を教えてくれた。
ハチゴロウが飛来した豊岡盆地には、当時は他のコウノトリは生息していなかったから、野生の「ハチゴロウ」は他個体との競争なしに、自由に最適の餌場を選んでいたことになる。図1は、ハチゴロウが2002年9月から2005年9月(第1回試験放鳥)までに過ごしていた地点を示したものである。正にコウノトリにとって、ここがもっとも好適な場所であると言える。だからこそ、佐竹節夫さんを中心に、近くに「ハチゴロウの戸島湿地」が作られたのだ(佐竹節夫 2009 『おかえりコウノトリ』童心社)。ハチゴロウは重要なことを私たちに教えてくれた。
また、国土交通省は2005年に、「円山川水系自然再生計画」を策定し、豊岡盆地で生物生息・生育環境の多様性が高いと考えられる4か所の一つに、このハチゴロウの生活場所を含めている(図2)。これもハチゴロウが私たちに教えてくれた重要なことであろう。さらにこの地域は、環境省の「ラムサール指定地域」にも隣接している(図3)。これもハチゴロウがこの地域を重要な場所であると私たちに教えてくれたからであろう。
このように、私たちがハチゴウから学んだことは計り知れない。この7月には兵庫県と豊岡市が予算を出し合って、「第5回コウノトリ未来・国際かいぎ」を豊岡市で開催する。韓国からパク・シリョンさん(韓国教員大学教授)、イ・チャヌさん(韓国慶尚南道ラムサール環境財団)が来日して講演されると聞くが、韓国へ行った雌のコウノトリから韓国の人たちは何を教わったか、お聞ききするのが楽しみだ。
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