園長日記
今、鳴門が熱い。2羽のメスとオスが但馬地域およびその近接地以外で初めて自力で繁殖を始めたことに地元が燃えているからだ。
この2羽は,4歳オスJ0044(伊豆ペアの子)と2歳メスJ0480(2013年朝来市三保放鳥拠点よりリリース)で、今年の4月に鳴門市の変電所の鉄塔に巣材を運んでいたが、感電の危険防止から四国電力により撤去された。その後、そこから2kmほど離れた大麻町の電柱に巣材を運んでいたが、5月12日の台風の接近で巣材がすべて落ちてしまったようだ。しかし、翌日には再び同じ電柱に巣材を運び始め(写真1)、5月21日には交尾も観察されたのである(写真2)。
こうした状況を受け、徳島県が主導して5月21日には電光石火の早さで官民組織「コウノトリ定着推進連絡協議会」が発足した。この会には徳島県、鳴門市、地元JA、生産者団体、徳島大学、四国大学、日本野鳥の会徳島県支部など10団体が入っていて、「郷公園も」アドバイザーとなっている。会長にはレンコン生産の技術開発や後継者育成に取り組むNPO法人「れんこん研究会」の竹村理事長が就任された。くだんの2羽のコウノトリが主な餌場としているのはレンコン田であり、同氏はコウノトリの繁殖と地域の特産品の開発にはうってつけの立場におられると拝察する。協議会ではコウノトリの定着と地域活性化を目指して、1)生物調査部会、2)餌場確保部会、3)営巣場所確保部会、4)啓発部会、5)ブランド推進部会の5つの部会がつくられ、協議が今後続けられると聞く。
郷公園では、今年、放鳥10周年を迎え、これまでの10年間の総括と今後10年の目標を定めたところだが、そのゴールは「国内への繁殖地の拡大」と「国外への拡散」の二つに尽きる。今回のメスは2歳であって、まだ繁殖年齢に達していないと考えられることから(前例がないということで、繁殖する可能性が皆無ではない)、今年の繁殖は無理だとしても、来年以降の繁殖は大きな期待が持てる。但馬地方以外の地での初繁殖地成立に私たちも大きな期待を寄せるとともに、これから全国にこうした事例が広がる際の望ましい取り組み方として、大いに参考にするべきだと思う。
また、今回特筆するべきことは、四国電力が巣造り中の電柱に電気が行かないようにバイパスの電線を張り感電の危険性を回避してくれたことである。この粋な計らいは大変ありがたいことで、全国的に巣塔のない地域で、電柱に巣作りが始まった際に、他の電力会社にもぜひ参考にしていただきたいことだ。
いずれにしても、平成23年6月につくられた「コウノトリ野生復帰グランドデザイン」が、うれしいことに、また1歩、大きく前進しそうだ。
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