野生復帰
野生復帰の意義
コウノトリ(Ciconia boyciana)は,世界で極東地域にのみ生息する大型の肉食性鳥類であり,湿地生態系の食物連鎖の頂点に位置する頂点捕食者です.日本在来の動物であり,大陸との断続的な遺伝子交流を行いながらも,日本列島の生物群集のなかで進化してきました.
この野生絶滅した種を野生復帰させることは,この国本来の生物群集,特に近過去まで生息していた但馬地方の地域生物群集を復活・再生し,健全な生態系を取り戻すことに大きな意義・目的があります.また,この取り組みを成功させることは,他の野生絶滅種の野生復帰及びこのことによる地域生物群集の復活再生と健全な地域生態系の再生,ひいては地域生態系のサステナブル・マネジメントに向けて,国内外に明確な展望を与えることになります.
豊岡のコウノトリの例に見られるように,歴史に裏打ちされた地域生物群集の復活こそが生物多様性回復の真の意味であることは言うまでもありません.生物は地域生物群集の中で進化してきたからであり,そのことの証拠及び望ましい環境目標は地域の歴史に求めるしかないのです.