公立大学法人 兵庫県立大学大学院大学院 地域資源マネジメント研究科

園長日記

(033)赤石の姉弟ペアの解消

前回、「ハチゴロウが教えてくれたこと」を書いた。そのハチゴロウが好んで採食地としていた中心地に「赤石巣塔」が立っている。この巣塔は、No.07(2013年4月12日)の園長日記に書いたように、繁殖を阻止するために陣笠をかぶせたような異様な障害物が巣台の上に設置されていた。なぜそのようなことをしなければならなかったのかは、その折に書き記した通りだが、復習してみるとこうだ。

ことの初めは、2006年に放鳥された2羽、J0384♀(2004年生まれ)とJ0389♂(2004年生まれ)が、翌2007年にペアになって赤石巣塔にすみ着いたことに始まる。このペアは近親結婚ではなく、2010年には息子のJ0020♂を巣立たせている。ところが、翌2011年には、繁殖途中に夫のJ0389♂が死亡し、赤石巣塔の妻は未亡人となった。しかし彼女は赤石巣塔に留まり、翌2012年には、あろうことか息子のJ0020♂とペアになってしまったのである。郷公園では、その年にできた「コウノトリ野生復帰グランドデザイン」に従って、この近親婚ペアの繁殖を阻止した。この息子は幸いなことに、この年の繁殖期を過ぎて、自ら赤石を離れて行って、私たちは安堵の胸をなでおろしたものだ。

翌2013年になると、赤石巣塔へ新しいオスがやってきた。ところがなんとこれが、2008年に放鳥した赤石巣塔のメスの弟、J0426♂だったのである! 「母息子婚」が自然解消して、できた次のペアが今度は「姉弟婚」だったわけだ。またしても、私たちは繁殖阻止をしなければならなかったのだ。しかし、その一方で、No.07でも書いたように、「こうした許されない結婚をしたペアの解消がなされないと根本的解決にならない」ので、並行して、このペアを捕獲しペアを強制的に解消させようと試みてきた。しかし、昨年は残念ながら捕獲に成功しなかったのである。

今年も、このペアの捕獲を試み続けてきたが、ついに、4月22日に捕獲に成功した(写真1)。周知のように豊岡の野生個体群では、性比が極端にメスに偏っており、オスは他所から譲り受けてきて放鳥するほど貴重品だ。そこで、今回もJ0384♀を捕獲して、禽舎へ隔離収容して、残されたJ0426♂の近親婚ではない再婚を願っているわけだ。

メスの隔離と時を同じくして、赤石巣塔からは醜悪な繁殖阻止装置は撤去された(写真2)。これで、めでたく正常なペアが出来上がれば、我々の試みの最終目標が達成されたことになるのだが、その結末はいかがなものに相成るだろうか。

独身になったJ0426♂は、今のところ一人で、西公開ケージに餌を食べに毎日のようにやってくるが(写真3)、ここで、新しいお嫁さんと出会ってくれるといいのだが。コウノトリの野生個体群では、今年は12組のペアのうち2組(16.7%)が近親婚だった。このほかに、上に述べたように性成熟したオスの不足から、2組のメス・メスペア(16.7%)が存在し(園長日記No.3参照)、全体のペアのうち約3分1が正常なつがいではない。この値は、鳥類の野外個体群ではありえない高い比率である。

一方、佐渡島のトキでは、4月15日現在で、24組がペアになり、そのうちの4組(16.7%)がきょうだいペアである。トキでは、成鳥の捕獲が難しいので、きょうだいペアのヒナが孵るとそれを禽舎に収容する方策をとっているが、巣場所によってはそれもできない場所がある。トキでは性比がコウノトリほど偏っていないせいか、メス・メスペアはできていない。いずれにしても、野生復帰を試みている両種で、こうした近親婚に対処するのは難しいのが現状だ。

(写真1)捕獲され、搬送箱へ移されるJ0384♀

写真1 捕獲され、搬送箱へ移されるJ0384♀

(写真2)赤石巣塔の「接近阻止ツリー」を除去する

写真2 赤石巣塔の「接近阻止ツリー」を除去する

(写真3)独身になって西公開ケージにやってきたJ0426♂

写真3 独身になって西公開ケージにやってきたJ0426♂


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