公立大学法人 兵庫県立大学大学院大学院 地域資源マネジメント研究科

園長日記

(026)新大学院の発足

今年の「コウノトリ野生復帰」は、野生下100羽超えの新しい局面を迎えようとしているが、新しい局面といえば、今年の目玉はもう一つある。兵庫県立大学は、郷公園内に新大学院「地域資源マネジメント研究科(当面修士課程)」を立ち上げる準備をしてきたが、昨年10月に文部科学省の認可を受け、この4月の開学を目指して建物の建設が現在追い込みに入っている(写真1)。

この新研究科は「コウノトリや山陰海岸ジオパークといった、地域の歴史に裏打ちされた地域資源を、活用することにより保全し、あるいは、新たに学術的に発掘し、民学および官との連携で、地域社会の活性化を行ない、『汎用性の高い理論と実践スキル』を修士学生に培い、社会に送りだす」という目的で設立される。つまり「地元の自然をうまく使って、町や村を元気にするには、どうすればよいか」を研究する、これまでほかではあまり類を見ない研究科なのである。

それでは、なぜ豊岡の郷公園なのか? その研究材料となる、人の暮らしに身近な「自然の財産」が、「コウノトリの郷公園」周辺には豊富にあるからだ。研究材料のひとつは、もちろん、ほぼ全個体が個体識別されたコウノトリ個体群である。また、彼らが野生で子々孫々、末永く生きながらえるには、生息環境が整っているだけでなく、住民との良好な関係が欠かせない。人里が舞台だから、地元の人たちが彼らを愛し、野生に復帰させる意味を納得して、気持ちよく協力していただかないと、野生復帰はうまく行かない。地元の自然を財産としてうまく活かすには、人々の想いを正しく受け止め、科学的な情報を相手にわかるように伝え、時には説得もする、「コミュニケーション能力」が大事である。豊岡でなら、そのノウハウを、学生は肌で吸収することができるだろう。

さらに、なぜこの豊岡周辺が、日本最後の野生コウノトリの生息地になったのか? また、コウノトリが生きていくには、何が必要か? それを知るには、コウノトリの生態だけでなく、ここを舞台に繰り広げられてきた数千万年の大地の歴史、その大地に数万年かけて育まれ、同時に大地を育んできた生きものたちの歴史、さらに、数千年にわたる人の暮らしと自然との関わりの歴史を総合的に研究する必要がある。そして、この地域で、なぜ野生復帰がうまくいっているのか? 問題点は何で、どう解決すればよいのか? といったことも、学んだり探ったりする必要がある。

地元を元気にするための自然の財産は、生きものだけではない。地元でしか見られない地形や地質がある場合は、それも大切な財産である。ここは、山陰海岸ジオパークの真っ只中だ。独特の地形や地質をどう使って、地元を元気にするかも、重要な研究課題である。こうした構想のもと、新研究科では、現在の郷公園の研究スタッフに加え、新たに地学と人文社会科学の教員を迎え、「ジオ・エコ・ソシオ」を学問の3本柱にして学問統合を行う予定だ。学生は「人と自然に関する高度な教養」を身につけることができるだろう。

ここまでは、いいことずくめであるが、まったく新しい組織が郷公園に4月からは共存することになる。「郷公園」と「新大学院」がどのように互いの成果を補完的に強め合っていけるのか、それが今年の重要な課題になるだろう。新しい大学院の建物は、現在の「管理・研究棟」と「空中渡り廊下」でつながる。廊下がつながるだけでなく、本当の意味で両者がつながる努力をすることが大事だろう。最後に、この分野に興味をお持ちの若い方々がこの新学科に入学されることをお勧めしたい。

(写真1)建設が進む大学院新研究科

写真1 建設が進む大学院新研究科

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