公立大学法人 兵庫県立大学大学院大学院 地域資源マネジメント研究科

園長日記

(023)世界野生復帰通覧

「光陰矢のごとし」というが、私がコウノトリの郷にお世話になって、まる3年間が経過した。3年前の就任の記者会見で、2つの大きな抱負を臆面もなく申し上げたことを良く覚えている。一つは「印象」や「思いこみ」によるコウノトリ野生化事業ではなく、科学的根拠に基づいた「野生復帰」を目指したい。もう一つは、野生復帰に関して得られた成果を国際的に発信したいということだった。

そのために、具体的に取り組んだことは、これまでのデータを科学的に解析し、それを国内外に広く広報するために、科学研究誌『野生復帰』を郷公園が創刊したことだ。これによって、コウノトリの野生復帰に関するテクニックが、個人の財産ではなく、万人のものになることが期待される。また、国際自然保護連合(IUCN)の『Global Re-introduction Perspectives: 2013』へ投稿していたコウノトリの野生復帰の現状が、このたび同書85-89ページに掲載された(写真1)。この本は、全体で282ページに及ぶ大著で、鳥だけでなく、無脊椎動物、魚類、両生類、爬虫類、ほ乳類、植物について、最近世界で行われた野生復帰が総覧されている。言ってみれば『世界野生復帰通覧』とでも和訳できるだろうか。その中で、わが国のコウノトリの野生復帰は「部分的成功」と位置づけられ、残された問題点として、1)餌動物(特に魚類)の不足、2)給餌からの脱却、3)近親婚の回避、が挙げられている。

これらの科学的知見に基づいた、今後のコウノトリの野生復帰のガイドライン『コウノトリ野生復帰グランドデザイン』が策定されていたが、これも外国からの問い合わせが増えていることから、来年3月には『野生復帰』の第3号に英語版が掲載される予定である。

こうしてみると、3年前に私がひろげた大風呂敷は、郷公園の皆さんのご協力を得て、少しずつではあるが果たされつつあると自画自賛しているところだが、どうだろう。

(写真1)豊岡のコウノトリは表紙を飾った

写真1 豊岡のコウノトリは表紙を飾った

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