公立大学法人 兵庫県立大学大学院大学院 地域資源マネジメント研究科

園長日記

(021)超域保全

飼育下のコウノトリは、現在、日本に合計178羽いる。これらは18施設で飼育されてきたが、そのほとんどは動物園関係施設であった。それらの施設は「公益社団法人日本動物園水族館協会(JAZA)」に属し、施設間での個体の移動は、協会に「種別計画管理者」がいて、家系や遺伝的多様性などを配慮して、スムーズな個体交換が行われるように配慮されてきた。

ところが、近時、動物園水族館協会に加盟していない施設でも、コウノトリがかなり飼育されるようになってきた。私ども「郷公園」も非加盟施設であり、全体の約51%にあたる90羽を保有している。ちなみに国内で2番目に多く飼育しているのは東京の多摩動物公園であり47羽(17.8%)を保有している。つまり、国内全飼育数の約半数は、JAZA「種別計画管理者」の管理の手に及ばないところに存在するようになってきた。そのうえ、最近、福井県や野田市でも飼育されるようになり、そこも「非加盟施設」なので、JAZA加盟施設と非加盟施設間との、個体交換に関する緊密な連携が必要になってきた。

さらに、コウノトリの野生復帰にともない、飼育施設内だけではなく、現在76羽のコウノトリが兵庫県と京都府において野生下で繁殖している。これら野生個体群の遺伝的多様性の管理を図るためにも、施設間の緊密な連携が、これまた必要欠くべからざるものとなってきたのである。

そこで、今回、特別天然記念物コウノトリの域外・域内の個体群の管理に関する様々な課題を各関係機関・飼育施設が共通認識し、解決策を協議・実行するための組織として、「コウノトリの個体群管理に関する機関・施設間パネル Inter-institutional Panel on Population Management of the Oriental White Stork (IPPM-OWS)」(略号IPPM)が立ち上がり、私ども「郷公園」も、そこにJAZA非加盟コウノトリ飼育施設並び野生復帰実施機関として参加することが10月1日の「野生化対策会議」で認められた(図1参照)。

希少生物を保全する場合、生息域内(野外)でする場合と、生息域外(動物園など飼育施設)でする場合があり、それぞれ、「域内保全」と「域外保全」と呼ばれてきた。これら二つは、車の両輪のようにバランスよく連携し合うことが必要だ。私も保全に関係した自著で、そのような主張をしてきたつもりだ。しかし、これまで具体的に、これを推し進める組織ができたことはなく、今回の国内初の試みに文化庁も環境省も多大の期待を寄せている。特に郷公園が「域内保全作業部会」で果たす役割は大きいだろう。今や、希少生物の保全は「域内」とか「域外」とか言っている時代ではなく、正に「超域保全」の時代に入ってきた。

IPPMの優れている点は、コウノトリだけに留まらず、IPPM=ライチョウとかIPPM=ツシマヤマネコとかIPPM=トキなど、コウノトリに続く組織が期待されることであり、国もそれを望むところであろう。IPPMが「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」のような、実効性のある組織に育つことを強く願ってやまない。

(図1)コウノトリの個体群管理に関する機関・施設間パネル

図1 コウノトリの個体群管理に関する機関・施設間パネル

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