公立大学法人 兵庫県立大学大学院大学院 地域資源マネジメント研究科

園長日記

(020)失踪宣告

郷公園のホームページを真面目に見ておられる、いわゆる「コウノトリ愛好者」の中には、野外コウノトリの個体数が、いつの間にか82羽から76羽に減っていることに、お気づきになった方がおられるだろう。その詳しい経緯と解説はホームページにすでに掲載されているのでご覧になっていただきたいが、簡単に言ってしまうと、一時収容された個体や、行方不明になっている個体が82羽の中には含まれており、それを除いた実際野外に現存する個体数76羽に修正したということである。このことを、同窓生で民事調停委員をしていたある友人に話したら、「そんなこと人間では常識だ」と言われたうえに、次のように詳しく教えてくれた。

人間の社会では、長期間ある人が「行方不明」になっていると、残された人は再婚したくてもできなかったり、財産分与をしていいのかどうかわからなかったり、様々な不都合が出てくるという。そこで、生死が7年間わからないときには、家族など関係者の請求によって家庭裁判所が「失踪宣告」をすることができるそうだ(普通失踪)。これには例外もあって、船に乗ったり、戦争に行っていたり、危険に遭遇する場所にいたような場合には、1年間でも宣告できるという(危難失踪)。

ところが、コウノトリの家族は、誰もこうした宣告をしてくれないので、長い間には行方不明の個体が、どんどん増えてきて現実の個体数とかけ離れてくる。そこで、今回コウノトリの家族になり変わって、郷公園が「失踪宣告」をしたというわけだ。その結果、従来の公表数82羽が76羽になったのである。コウノトリの場合は、1年間、行方不明が続くと、ひとまず死亡とみなすことに決めた。コウノトリにとっての野外は戦争並みの厳しさ(危難失踪)というわけだ。これを教えてくれた件の友人は、「死んだはずの個体がひょっこり帰ってきて、もとの巣の所有権を主張したり、新しい配偶者ともめたりすることはないのか」などと人間臭いことを言っていた。

個体数を測る場合は、一定のルールにのっとって数えるわけで、従来の数え方が間違っていたというわけではない。従来のルールは、「なるべく野外のコウノトリの数を減らさないでおこう」「多く見せよう」という配慮が無意識のうちにはたらいていたような気もする。思い切って「失踪宣告」をしようというのは、ある意味贅沢な選択かもしれない。

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