園長日記
9月3日(火)。郷公園は、「コウノトリの野生復帰に関する現状と課題―2013年版―」というタイトルで、合同記者会見をした。その結果については、翌日各紙がとり上げてくださったので繰り返すことはしないことにする。しかし、江崎研究部長のプレゼンの中で、性比がメスに偏り、「あぶれメス」がたくさん出ていて、メス・メスペアまでできていることが課題の1つとして問題にされた。このことについて、その場では突っ込んだ質問もなかったのである。
同日、場所を変えて、マスコミの方々と、アルコールもありの懇親会がもたれた。これは、郷公園としても初めての試みで、記者さんたちと打ち解けて心を通じ合うとてもいい機会だったと思っている。20名以上参加された中に、女性の独身の方が2名おられ、それに郷公園の女性独身スタッフが加わって、3名からなる独身女性連合が出来上がり、例の「あぶれメス」の話に花が咲いた。彼女らが問題にしたかったのは、2つあり、1つは、「あぶれオス」はないのか、という反感があるらしい。「あぶれオス」は確かにいるのだが、性成熟していない子供だから問題にしていないのである。それに、言葉自身のもつ、ある種の「おどろおどろしさ」だそうだ。「あぶれ」というのは、如何にも余計者、不必要なものという響きがあるらしい。そう言われると、動物社会学では、和文論文ではこの手のくだけた用語が使われることがままあるが、これを英語に直すと、surplus female(余剰メス)とか non-breeding female(非繁殖メス)となり、前者には「あぶれ」の意味があるが、後者では「あぶれ」という意味はほとんど感じられない。
ところで、2つ目の問題だが(こちらの方が連合にとっては大事らしいが)、用語自体の問題が払しょくされても、「あぶれのどこが悪い」というのが彼女らの言い分であるらしい。彼女らご自身の貴重な体験に基づくこの主張はある面正しいのであって、あぶれメスのどこも悪くない。しかし、この論法が成立するのは、性成熟したオスがたくさんいるのに自分の意思で「あぶれ」ている場合だろう。コウノトリには性成熟したオスがいないから、「大人のあぶれメス」には、独身でいるか、繁殖するかの選択がないのだ。「あぶれ」るしか道がないところが問題なのだ(園長日記のNo.17を参照されたい)。
それにしても、こうした突っ込んだ論争は、とても素面ではやりづらい。お酒も入って、お互い少し顔が赤くなって、何でも言い合える雰囲気になって初めて本音の話し合いができるのである。初めての懇親会は大成功だった。
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