公立大学法人 兵庫県立大学大学院大学院 地域資源マネジメント研究科

園長日記

(017)ペア数はこれからどうなるか

豊岡の野外のペア数は現在11である。一方、6月19日現在で、野外にはヒナや幼鳥を含めて、79羽(オス26羽、メス45羽、性不明8羽)が生存している。それなら、もっとペアができてもよさそうに思われる。そこで、野外個体の性別と年齢を詳しく見たのが表1である。コウノトリはオスもメスも、およそ4歳で性成熟する。表を見てすぐにお分かりのように、ペア数はオスの性成熟した数(大人の数)とよく一致している。メスは性成熟した大人が沢山余っている。このように、メスがオスより多くなる原因は、まだよくわかっていないが、オスの方が活発で網など危険な場所に近づいて事故死しやすく、メスは採食技術が優れているらしい。大人のメスが沢山余ってくることは、メス・メスペアが生じたり、配偶オスや巣場所をめぐるメス間の競争が激しくなるだろうことが予想され、現にこうしたことはすでに実際に起きているのである。

次に、2006年に初めて1ペアができてから、毎年どのように増加してきたのかを見たのが図1だ。2013年までに11ペアまで着実に増えてきた。そこで、「4歳で大人になるとペアになれる」と仮定すると、来年からのペア数の推移は、図1の白棒で示したものになる。つまり、今後も順調に増加し、2017年には24ペアになると予想される。この予想はかなり乱暴で、鳥たちの死亡や大陸からの移入や放鳥を見込んでなく、性別不明もいるので、正確にこの数になるわけではないことは勿論である。そうは言っても、わずか4年後に、20ペアを越えることは間違いなかろう。

そうなったときの問題点を今から考えておくことが必要だ。まず、巣場所の確保が大事だろう。現在、巣塔は合計25本立っているから、20ペアできても構わないように思われるが、コウノトリはなわばり性の鳥であり、なわばりの半径は約2.5キロということが分かってきたから、現在繁殖に使われている10本の巣塔の半径2.5キロ以内にある重複した巣塔は、まったく無駄な巣塔ということになる。こうした巣塔の再配置をして、さらに足らない巣塔が何本なのかを明らかにして、その用意をする必要があろう。次の問題は、やはり生息環境の整備であろう。現在生きている羽数の鳥たちが結婚するだけなら餌量はたいして変わらないだろうが、これに子供たちの餌量が加わるので、どうしても、餌場の整備をする必要があるだろう。これまでは、どちらかというと、熱心な方々がいて、すでに餌場の整備がされている場所に巣塔が立てられたり、篤志家個人の巣塔が建てられてきた。これからは、巣塔の配置をまず決めてから、そこの環境整備をするという戦略的環境作りが大事になってくるのである

だから、今回起きている下鶴井地区のスポーツグランドのことも、こうした全体を視野に入れた環境作りをどうしたらよいのかを考えるためにも、事前に話し合われたら良かったのではないかと思う次第である。

生存個体の性と年齢(黄色の網かけはペア)

生存個体の性と年齢(黄色の網かけはペア)

(図1)ペア数の増加(白棒は推定)

図1 ペア数の増加(白棒は推定)


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