公立大学法人 兵庫県立大学大学院大学院 地域資源マネジメント研究科

園長日記

(009)豊岡から但馬へ

4月5日。養父市伊佐地区の「放鳥拠点」でコウノトリのヒナが孵(かえ)った(写真1)。昨年10月19日に養父市と朝来市(三保地区)の2か所に放鳥拠点を設け、豊岡市域外の南但馬へコウノトリの繁殖地を広げるための試みであり、まずは伊佐地区で孵化が成功したわけだ。これは「コウノトリ野生復帰グランドデザイン」に従ったものである。

箱に鳥を入れて放鳥したい地点に移送して放しても(ハードリリース)、放鳥された鳥は気まぐれで、そこに留まるとは限らない。放鳥拠点というのは、放鳥したい場所にケージを設置して、そこでペアを飼育する。そのペアからヒナが孵り巣立ちを迎えると、ケージの天井を空けて親鳥は飛翔できないように風切羽を切り、ヒナだけが自由に野外と行き来できるようにして、巣立ちビナは親の元に戻ったりしながら、その場所で徐々に自立していく方法である。この放鳥方法だと、親がいるので巣立ち若鳥たちが生まれた場所へ執着するから、ハードリリースに比べ定着が期待できるのである。

さらに、今回はかなり複雑なやり方で孵化させた。伊佐のペアは夫婦の相性も良く子育てがうまい有能ペアであるが、それだけにこのペアの子供たちがこれまでに野外に相当数出ている。そこで、このペアの子供がさらに野外に出て行くと、これまでにも書いてきた、兄妹(姉弟)婚が起きる可能性が非常に高い。そこで、これまで子供が野外に出ていない別のペアを飼育下で産卵させ、時期を見計らいながらその卵と交換したのである。つまり、伊佐のペアは養子を育てていることになる。こうしたことは卵生の鳥類でこそできる方法であるが、郷公園では初めての試みである。これが成功すると、豊岡の周辺に新たなコウノトリの繁殖地を広げて行くのに大きな前進となるし、この方法は、福井県や野田市で、現在取り組んでいるコウノトリの飼育に将来的な見通しを与えるものになるかもしれない。

郷公園では、このたび「つなげる、つながる」というポスターを500部印刷した(写真2)。豊岡に始まったコウノトリの野生復帰を、まず但馬へ、周辺県へ、さらに全国へ「つなげて行こう」という将来像を描いたものである。きれいなポスターなので、欲しい方は郷公園の公式ホームページのPDFをダウンロードされるといいだろう。

(写真1)養父市伊佐地区の放鳥拠点で孵化したヒナ

写真1 養父市伊佐地区の放鳥拠点で孵化したヒナ

(写真2)「コウノトリの野生復帰のこれから」を示すポスター

写真2 「コウノトリの野生復帰のこれから」を示すポスター


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