公立大学法人 兵庫県立大学大学院大学院 地域資源マネジメント研究科

園長日記

(001)コウノトリをハバロフスクへ贈る

兵庫県は、2009年の「兵庫県・ハバロフスク友好連携40周年記念共同声明」で、コウノトリ4羽をハバロフスク州へ寄贈することを決めておりました。これが延び延びになっていましたが、昨年(2012年)10月31日に、県の社会教育課の方々と私がご一緒に2つがいのコウノトリを無事贈呈してまいりました。

兵庫県が絶滅の危機にあったコウノトリの保護・増殖に本格的に取り組み始めたのは、およそ半世紀前の1965年のことでした。しかし、飼育コウノトリの羽数はなかなか増加しませんでした。そんな中で、姉妹都市提携を結び、友好関係の深かったハバロフスク州政府から1985年に6羽のコウノトリを郷公園に寄贈していただきました。この時に寄贈されたコウノトリのペアから生まれた卵が、兵庫県で初の飼育下での孵化・巣立ちとなったのです。以来、計12羽のコウノトリを郷公園に寄贈していただき、それによって保護増殖事業は軌道に乗りました。

現在では、野外コウノトリ60羽、飼育コウノトリ90羽になりましたが、このうち約80%がハバロフスクの血を引くコウノトリたちです。日本でのコウノトリの保護・増殖と野生復帰への取り組みの順調な進展は、ハバロフスクのご支援がなければ成し遂げることができませんでした。そこで、郷公園で生まれたコウノトリの2つがいを、友好のお礼も込めて今回故郷へお返しし、兵庫県とハバロフスク地方の連携関係が末永く続くようにという願いを込めたのです。

寄贈式典は、ハバロフスク市内のプリアムールスキー動物園で行われました。それは、寄贈されたコウノトリの飼育舎がこの動物園内に作られたためで、飼育舎には暖房設備が装備されているとはいえ、当日は市内に設置されたデジタル温度計はマイナス9度Cを示し、豊岡育ちのコウノトリたちは流石に寒そうでした(写真1)。

ところで、正直に言って今回のこの寄贈については、当初、私はあまりその意義を理解しておりませんでした。それどころか、コウノトリのメタ個体群のソースに当たる、ハバロフスク地方へ、それも動物園に寄贈することにどれほどの意義があるのかと多少懐疑的だったのです。ヨーロッパのように人の近くでコウノトリが繁殖している地域の動物園で飼育コウノトリを観察することは、そんなに重要なこととは思えません。私は、ヨーロッパとハバロフスクが同じ状況だろうと思っていたわけです。

しかしながら、私のこの考えは間違っていたことが、現地に行ってみてよくわかりました。ハバロフスクではコウノトリは市街地から遥か離れた原生の保護区の生息地にしかおらず、ごく限られた研究者や、保護に携わる行政官を除いては、大人でさえコウノトリを見た人は少ないのが現状でした。そもそも、ロシアと日本ではコウノトリの保護のしかたが根本から違うことを今回教えられました。それは土地の広さと所有制度に関係あります。ロシアではコウノトリを保護するとなると、広大な国有地に保護区を設定し、完全に人の近づかない地域に囲い込みます。その保護区の広さは、合計で何と兵庫県全体より広いのです!コウノトリを一般の人が容易に観察できる状況ではないのです。

このような状況ですから、ハバロフスク市内の動物園で、子供も大人も、コウノトリを観察できるということは、自然教育の面からも大事なことだと知ったわけです。式典に参加した子供たちのコウノトリに向けられた輝いた目を見たとき、私のこの思いは「いいことをしたのだ」という自信に変わったのです。そして、この自信は、子供たちの代表が「コウノトリに対する歓迎の挨拶」をしてくれ(写真2)、参加した子供全員でコウノトリに見立てたツルの折り紙を飼育舎の金網にぶら下げてくれた時に、さらに確信となりました。

これに対し、日本では、コウノトリもトキも、個人所有の水田で彼らと共生することが求められています。滞在中に「モスクワの声」というラジ局の取材を受けましたが、「ロシアでは今、コウノトリの保護区内を天然ガスのパイプラインが通ることになり問題化しているが、そうした問題についてどう思うか?」とコメントを求められました。どうも日本とロシアのコウノトリ保護は、私有地で行うか、国有地で行うか、その基本構造が異なるようです。

(写真1)寒そうに部屋から出てきた、寄贈コウノトリのつがい

写真1 寒そうに部屋から出てきた、寄贈コウノトリのつがい

(写真2)コウノトリ歓迎の言葉を述べるハバロフスクの小学生代表

写真2 コウノトリ歓迎の言葉を述べるハバロフスクの小学生代表


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