公立大学法人 兵庫県立大学大学院大学院 地域資源マネジメント研究科

園長日記

(057)放鳥10周年記念セレモニー

去る10月18日、放鳥から10周年を記念してセレモニーが行われ、コウノトリが将来営巣できるようにアカマツの苗木が三江小学校の生徒さんたちによって植樹された(写真1)。そこで私は次のようなご挨拶を述べさせていただいた。

(写真1)アカマツの苗木の植樹

写真1 アカマツの苗木の植樹


兵庫県立コウノトリの郷公園園長の山岸でございます。

本日は、放鳥10周年の記念式典の開催にあたりご案内を申し上げましたところ、井戸知事様及び谷衆議院議員様をはじめ、多数のご来賓の皆様にご出席いただき、厚くお礼申し上げます。主催者としまして一言ご挨拶させていただくとともに、本日に至る経過をご報告させていただきたいと存じます。

兵庫県がコウノトリの保護増殖事業を開始したのが今からちょうど50年前の1965年でした。これは放鳥前40年に当たります。しかし残念ながら、1971年には国内の野外コウノトリは絶滅してしまいました。長い試行錯誤の後、1989年には、ついに人工飼育下での繁殖に成功いたしました。

兵庫県がコウノトリの野生復帰を目指して「コウノトリの郷公園」を開設したのが、1999年でございます。初放鳥に先立ち、2002年8月5日に、野生のコウノトリ「ハチゴロー」が大陸から豊岡へ飛来しました。この「ハチゴロー」の飛来は、初放鳥に向けて大きな弾みとなるとともに、2007年2月に死亡が確認されるまで、野生復帰の先導的な役割を果たしました。2002年には、豊岡市にコウノトリ共生推進課ができ、地域との連携が一段と進みました。この頃、コウノトリの生息環境の整備も着々と進みました。また、連絡協議会もでき、地元のお力添えで、放鳥の準備が整いました。

そして、今から10年前の2005年9月24日に、秋篠宮殿下、同妃殿下のご臨席のもとに5羽のコウノトリをこの場所で自然界に放鳥いたしました。これがまさに放鳥元年でございます。一度絶滅した動物種を人里近くで再び自然界に放すという、世界でも類を見ない試みでした。

初の放鳥から2年後の2007年には、百合地巣塔で日本の野外で43年ぶりにヒナが誕生し、そのヒナが実に46年ぶりに巣立ちし、放鳥からわずか2年で野外繁殖に成功いたしました。また、2012年には、福田巣塔で野生第3世代も誕生しました。それ以降、皆様もご存じのように毎年野外での巣立ちが確認され、また、継続して放鳥を行ってきた結果、現在、野外の個体数は82羽まで増加しています。それらのうち、特に若鳥は、全国に広がって行き、最近では出先に留まるものも30羽ほどになっています。その飛来先は全国の41府県280市町村で確認されている状況にあります。

さて、今から4年前の2011年に兵庫県教育委員会とコウノトリの郷公園は今後のコウノトリ野生復帰の目標を記した「コウノトリ野生復帰グランドデザイン」を策定し、その中で短期・中期・最終ゴールのそれぞれの目標を定めて取り組んでいます。それの中期目標の一つ「兵庫県外での繁殖個体群の確立」に向けて、最近大きな動きがございました。

2013年には、養父市、朝来市で、豊岡市以外で初めて放鳥が行われ今年も放鳥を行いました。これは、野外の繁殖場所を南但地域にも広げようと、養父市、朝来市の強い願いにより取り組んでおります。2014年3月には、豊岡盆地で巣立った1羽が初めて国境を越えて、韓国で確認されました。その後、今年の2月と9月にもそれぞれ別の個体が韓国で確認されています。今年の7月23日には千葉県野田市で、10月3日には福井県越前市で兵庫県以外で初の放鳥が行われました。この2つの地での放鳥が、県外での新たな繁殖地の創設につながるものと、大きな期待を寄せています。

さらに、徳島県鳴門市で今年5月に豊岡で巣立ったオスと、朝来市で放鳥したメスによる電柱での巣作りが確認されました。豊岡盆地とその周辺以外で巣作りが確認されたのは初めてのことで、来年以降の繁殖に期待が高まっております。また、今年9月3日には韓国でもコウノトリが放鳥され、コウノトリ野生復帰の取組は、国内はもとより海外にも広がりつつあります。このように、放鳥から10年経過して、コウノトリ野生復帰の取組は順調に推移し、この豊岡ではコウノトリが飛んでいる風景が当たり前のようになってきています。この間、コウノトリを温かく見守っていただいた地元の皆様、また、コウノトリの餌場確保のため、ご尽力いただいた農業関係や漁業関係の皆様、そして、地元豊岡市をはじめコウノトリの野生復帰を応援していただいた全ての皆様に対しまして、あらためて深く感謝しますとともに厚くお礼申し上げます。

故阪本知事の「滅びゆくものはみな美しい、しかし、滅びさせまいとする願いはもっと美しい」という言葉に始まったコウノトリ野生復帰のプロジェクトは、その後何と、半世紀の長きにわたり、いささかもぶれることなく5代に渡る兵庫県知事によって引き継がれてまいりました。5人の知事さんに深い尊敬と感謝の意を表させていただきます。また、それを支えてくださった文化庁のご支援に深く感謝いたします。私たちは「再び絶滅させてはならない」という信念のもと、放鳥10周年にあたり「全国へ そして世界へ」をキャッチフレーズに繁殖地の拡大に向けて一層の努力を重ねてまいる所存です。

コウノトリの野生復帰は郷公園だけの力でできたものではないことは申すまでもございません。本日ここにご参集いただきました皆様方をはじめ地域の方々のより一層のご支援、ご協力をお願いいたしまして私のご挨拶とさせていただきます。

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