園長日記
(025)世界一豪華な巣塔
2年ほど前にトルコのアルテミス神殿跡を訪ねた。古代世界の七不思議に数えられた神殿だが、現在は湿地の中に1本の円柱だけが立つ。背景は、聖ヨハネ教会と城塞のあるアヤソルクの丘だ。この円柱のいただきにコウノトリ(もちろんヨーロッパコウノトリだが)の巣があった。訪れたのは11月の初めで、すでに巣の持ち主たちは南に渡り去った後だったが、これは世界一豪華なコウノトリの人工巣塔といえよう(写真1)。
巣塔といえば、以前にもお話ししたように、コウノトリのペア数が順調に増えて行く気配があるので、ペア数に対して現在の巣塔の数が足りなくなるのは目に見えている。早く必要数を用意してやらないと、電柱の上に営巣を始めて、通電上の障害やコウノトリ自身に対する安全性の確保のため、巣を除去するという厄介な作業が頻発するだろう。
昨年11月17日、福井県越前市が中心になって「2013コウノトリが舞う里づくり大作戦」が開催され、色々のイベントが行われた。その中の一つとして、「大塩町地係」で福井県では4本目の人工巣塔の除幕式が行われた。この高さ13メートルのコンクリート製の巣塔は地元の企業が寄付してくれたものだそうだ(写真 2)。
まだ鳥も居つかないのに「巣塔より環境づくりが先だろう」という辛口の論評もある。確かに、環境づくりが一番大事ではあるが、但馬のコウノトリの総数が100羽に迫ろうとしていて、成熟年齢に達した鳥たちの県外分散が本格的に始まろうとしている新時代に、早めに営巣場所を用意してやるという配慮は、そんなに的外れのものでもないような気がする。但馬でも人工巣塔の設立に協賛してくれる企業はないものだろうか?
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